REPORT
キャストやスタッフのインタビューをはじめ、
稽古風景のレポートをお届けします。
NEW PAST
11/25/2004 21:26:30
  小笠原京子(脚本)◆Zへ
宿命とは、惨いものです。
甘んじれば弄ばれ、いつか突き放されてしまうものです。
今、きみは
大きな変化の時期に来ているのかもしれません。
先日、きみの声がテレビから流れてきた時、そう思ったのです。
理由はわかりません。
ただ、そう思ったのです。
あの夏の日が嘘のように、強く響く良い声でした。
誇らしくさえ、ありました。

どこにいても、
何をしていても
誰にも奪うことのできないものは
自分の中に育つ「生きる力」だけです。

生きる力とは、研ぎ澄まされた「運」と「感」。
そしてそれらを支えるのは「縁」。
忘れてはならないのは「恩」です。

どうぞ、期待された以上のことを軽々とやってのける人になってください。
わたし自身も、そうあり続けたいと思っています。

演劇の現場は個人の集合体です。
個人個人のもてる力が大きければ、
そしてほんの少しの共通語と強い志があれば、きっと素晴らしいものがつくれるでしょう。

またどこかの稽古場で会いましょう。
その日が来るまで・・・。

2004.11.25 小笠原京子

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終演後も続けさせていただいていたこの稽古場リポートは11月末で終了です。私小笠原京子の回は、これにて最終回となります。また劇場でお会いできることを祈っております。
長らくのお付き合い、ありがとうございました。
11/11/2004 22:29:45
  小笠原京子(脚本)◆3000円の重み
「物販だけご利用なさりたいお客様がおいでです」
入り口でチッタのスタッフから声をかけられる。

出てみると中学生くらいの二人の女の子が、心配そうな顔で立っていた。
「あの、ライブは見られないんですけど、売店だけ。駄目ですか」
ロビーはもの凄い混雑。物販カウンターは黒山の人だかり。

少し待っていてもらえます?
今あんな風に混雑していて・・・
と言いかけて、もしやと思う。
「買いたいものが決まっているなら、ここまでお持ちしますよ」

少女らは顔を見合わせ、
「今日発売の『空ノ色』っていうCDを・・・」
か細い声で言った。

やっぱりだ。
この二人は「空ノ色」先行発売の今日、川崎の、この夜のライブハウスまでわざわざやってきてくれたお客様だ。

「では3000円ずつお預かりしましょう。ここまで持ってきます」

二人は小さな声で「わぁっ」と言って微笑んで、それぞれの財布を開けた。
・・・見てしまった。
そこにはきっかり1000円が3枚。
これを買ったら買い食いもできないなけなしの3000円。

売店に走り、彼女たちのためのCD二枚と、特典の付録、このライブでしか配布されていないCDのチラシを持って戻る。
手渡されたものを見ると、二人は満足そうに笑って、何度も
すみません。ありがとうございます。と言った。

ありがとうを言いたいのはこちらの方です。
吉良さんは
あなたたちのような人々に支えられて
この無謀なCDを作ろうと決心したのです。
そこには難関がいくつもあったけれど、
これを待っていてくれるあなたたちのような人がいたから
誰もその無謀さにも文句を言わず、笑い飛ばしもせず、また再び集まったんです。

わたしは、心の中でそう叫びながら見送った。
声をたてて笑いたいような、泣きたいような、妙な気分がおさまるまで。
二人の姿が角に消えて、その影さえ見えなくなるまで。

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「空ノ色」購入方法や詳細などはzabadakのHPにてご案内できるようです。BBSもあるようですので、そちらへ是非どうぞ。
http://www.zabadak.net/
11/09/2004 01:49:08
  小笠原京子(脚本)◆ニセ・コーランと空ノ色
二階席は一応イスがあるのだけど、
みんなサルみたいに手すりに捕まってピョンピョン跳びはねたり、
(よい子の皆さんは、あぶないからおやめください)
補助イスをあさってのほうにすっとばして汗だくで踊ったりしている。
(よい子の皆さんは、他のお客様にご迷惑になるのでご遠慮ください)
時折ちびっこが
「きらさーーーーん」と小学生声で叫ぶのが、
「おとうさーーーーん」に聞こえやしまいかと心配で
口に脱脂綿を詰め込んで歩きたくなるのを必死でこらえた。
全員、エアロビ状態で熱狂している。
なんか、ここの空間だけ汗くさいというか、ケモノくさくないか?

そろそろ行きますと言いに来たくまちゃん(村上)に
「あたしたち二階席にして、本当に良かったよ」
と言った。
(笑いながら頷いたくまちゃんのTシャツも色がかわるくらい汗でドロドロだ)

「今日の空ノ色は前奏でニセ・コーランが入るからね、びっくりしないで。歌い出しはおれがギターでじゃんじゃんじゃんじゃんって入れるから、そこから。解った?」

と本番前の吉良さん。
ぽかんとした皆の顔。コーラン? しかもニセ???

「かがいのよる」を歌ったあと、
問題の「空ノ色」前奏が始まる。
バイオリンの太田さんの口から出たうなりは、

本当だ! コーランだ!

だって、ところどころ聞こえるのは
「イラク」とか「himawari」。
でもコーラン!!正真正銘のニセモノ・コーラン!

なんでこの曲にコーランがあつらえたようにはまるのか、
そもそも、誰の思いつきでいつやろうということになったのか、
なんでバイオリニストの太田さんは、「コーラン風」ではなく、「ニセ・コーラン」を操ることができるのか、
そんなことは全然知らないけれど!

プロのミュージシャンの生演奏に乗せて歌う
誰も見たことがない、聞いたことがない凄まじい「空ノ色」。
ライブだけの、ここだけのスペシャル「空ノ色」。

ああ、そうだ。そうなのだ。
わたしが稽古場でも本番でも追いかけ続け、つかんだようで手に入らなかった「奇跡」の一つはこれだ。これなのだ。
今日、歌ったメンバーは手に入っただろうか。感じただろうか。
ここにいるプロのミュージシャンが当たり前のように
毎ステージやってのける、この感じを。

俳優はアマとプロの境が曖昧で、多くのステージでプロとアマが共存を余儀なくされるが、プロのミュージシャンは決定的にアマチュアミュージシャンとは違うものなのだと思った。
ステージには、アマチュアの共存する余地がないのだ。
ここにいるミュージシャンはお客さんに選ばれる前に、
楽器に、音楽に、そしてミュージシャン同士にも選ばれている。
立場の曖昧な人、役割の希薄な人が誰もいないではないか。

終演後、ロビーに出てきた「あの方」が
「小笠原さん! 今日の空ノ色、もう一度聞きたいね! 素晴らしいね!」
とおっしゃっていたので、わたしは首がもげるくらい頷いた。
・・・なんと「あの方」も熱狂していた。

以前にも述べたが、「空ノ色」と命名されたこのCDと音楽は
ある夏に上演されたお芝居の思い出の残骸ではない。
ましてや消えゆく記憶を留めるための道具でもない。
独りで立ち上がって、もう別の旅を始めている。
また新たな観客を魅了している。
寂しくはない。
それが、何よりも誇らしくてならない。


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写真1 (ライブ会場での写真撮影は堅く禁じられています)
全員踊っている二階席。

写真2 ロビーでは帆前掛けを販売。結構うけていました。
上野聖太と振付の明城由佳さん。


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