■2006年3月10日(金) 沢木順さんインタビュー

練習風景

インタビュー第7弾は劇団四季に24年間在籍し、劇団を代表する『オペラ座の怪人』『美女と野獣』『CATS』といった作品に重要な役柄として数多くご出演の沢木順さん。
退団後も演劇やショーに活躍されています。
今回、『家なき子』では、主人公レミを厳しくもあたたかく育てる旅芸人一座の親方・ヴィタリス役を演じます。インタビューのお約束の場所へ颯爽と現れた沢木さんは、非常に明るく気さくにお話してくださいました。

- お忙しい中お越しいただきありがとうございます。「家なき子」の公演の間にソロミュージカル「YAKUMO」へのご出演、と実際大変なスケジュールですよね?
そうですね。四季を退団したらもっとゆっくりできてラクになるかなと思ってたのに、もっと忙しくなってる(笑)。というのも...どんどん自分を使ってほしいし、使ってくれなきゃ自分で仕事を作ってしまうから、ペース上がる一方なんですよ。

- リサイタルも精力的にこなしていらっしゃるとか。聞くところによると、沢木さんのリサイタルは歌よりトークが弾むとか?
話と話の間に歌が来るって時もよくあるんですよ。乗ると止まらないから(笑)。
演奏のピアニストさんに「そろそろ歌ってくださいよ!」って突っこまれるまで30分ぐらいしゃべってたりする(笑)結局、4時間もコンサートにかかることもあるんですが、評判いいからOKですよね?

- 歌だけでなくトークの魅力もめいっぱい楽しめるのはとってもお得ですね。ところで、劇団ひまわりのミュージカルに出演されるのは、今回が初めてなんですよね?
ええ。みんなすごく仲が良くて雰囲気があったかいところがいいなあと思います。世間ではもうあまり見ることのなくなった「年長の子が小さい子に礼儀や演技を教えてあげる」みたいな光景が普通にあってね。やっぱり俳優にとっても“社会性”はすごく大事なことなんだけど、家族や学校では教えにくくなっているだけに、こういう場は大事ですよ。
しかも今回の舞台では演技にダンスに歌にそれぞれハイレベルなレッスンを受けているでしょう。素質のある子たちが良いレッスンを受けて成長していく、こういうところで活動することができて幸せだと思いますよ。

- 沢木さんは子役も含めてキャストにとても慕われていますね。
ホント?自分のもっている舞台での知識なり、経験なり、全部を伝えられたらいいなという気持ちで接しているからかな。僕は年齢が上だから、これから先、子どもたちより長くは生きない。だから僕の全てをどんどん吸収して彼らには伸びていってほしい、と思っているんですよ。

- ところで、ご自身はどんな子ども時代を過ごされていたのですか?
ガキ大将でオール5! クラスでも生徒が担任教師より僕の言うことを聞くっていう...大人から見たら嫌な子どもでしょ(笑)。なんかお稽古事を始めても先生の言うことを聞かないし。
そんな僕が役者になりたいと思い始めたのは高校生になったときで、「滅茶苦茶に生きてみたい!」と思い立って、親父に相談したんですよ(編集注:沢木さんのお父様は作曲家八洲秀章氏)。 なんて返ってくるのかと思ったら「芸能界は力がないと辛い世界だ、やってみるといい」って、意外にも大賛成で...なんだか僕はそのまま、とくにえらい苦労を感じずに来てしまったような気もしてるんです。つらいことがあったといっても、役者としてイマジネーションの種になる程度というか。舞台をやるには人間的に下地がしっかりしてたほうが断然強いから、もっと苦労してもよかったなと思う。今、60代になっても日々勉強、勉強ですよ。
そうそう、「家なき子」のダンスシーンで僕が何回やっても飲み込めないところがあるんだけど、そこは小学2年生の共演者さんに教えてもらいました(笑)

- 「家なき子」で演じる沢木さんの役どころは、主人公のレミを全編で支えていくヴィタリス親方。その役づくりで心がけていることは?
僕のヴィタリスは、「ちょっと甘い」って演出に指摘されることもあるんです、実は。やっぱり犬や猿とドサ回りしてる旅芸人だし、多少の粗さもある男ですよね。それでもついヴィタリスを優しくさせすぎるのは、僕が彼のことをを100%良い人間だと思ってるせいかもしれない。
ヴィタリスの抱えている過去については舞台を見てのお楽しみなんだけど、彼のあたたかさにはそんな過去の挫折から学んだ弱者への優しさ、そして人間としての強さが込められているわけです。ヴィタリスがレミに限りなく深い愛情を注ぎ込めるのはなぜか...これは「家なき子」の中でもひとつの大きなテーマだと思います。
...僕もどんなことがあっても、心に品格をもって生きていきたいと思う。それは父の影響が大きいです。 僕ら子供たちに真顔で「いいかい、うちには宝物があるんだ。それは、目の前にいる子宝というお前たちだよ」と言える父に“自分が幸福だと感じる人が幸福”“他人の幸せを作っていける人が幸福”だと教えられました。
そんな宝物のような言葉がヴィタリスの台詞にも、レミの台詞にも、たくさん詰まってるんです。だからこの作品の伝えたいメッセージは、僕の信じている幸福と通じるんじゃないかな、と思っています。

- 本日はすてきなお話を、どうもありがとうございました。公演回数も残り少なくなりましたが、いい舞台になるようがんばってください。

 

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